MONSTAR-SCREEN(モンスター・スクリーン)メッセージ

真の個別化医療実現を目指す
世界水準のより良い診断・治療を日本の患者さんに届けるために“
東病院 副院長、医薬品開発推進部門長
MONSTAR-SCREENとは
SCRUM-Japan第4期(MONSTAR-SCREEN-2研究)までは、肺がん以外の固形がんの再発・転移で薬物療法を受ける患者さんに、一人ひとりのがんのタイプに合わせた適切な治療を届けること(がん個別化医療)を目指したプロジェクトでした。
第5期(MONSTAR-SCREEN-3研究)からは、これまで対象としていた固形がんの患者さんに血液がんの患者さんを加え、さらに手術などの根治的治療を行う患者さんにも適切な治療を届けることを目指してプロジェクトは大きく発展しております。

MONSTARは「Max Onco Network with STARs」を略した造語で、患者さんのために、がん(Onco)治療を担うスター医師たち(STARs)と世界最大のネットワークを構築するという意味を込めました。
本プロジェクトの前身であるGI-SCREEN-Japan(ジーアイ・スクリーン・ジャパン)は、消化器がんの患者さんに、がんの遺伝子変化に合わせた「最も有望な治療を世界で一番早く届けたい」という思いから2014年2月にスタートしました。GI-SCREEN-Japanでは、約5年間で3つの新薬と3つの遺伝子検査診断キットを保険診療で使えるようにするなどの成果を挙げました。この経験を生かし、消化器がんだけではなく他の固形がんの患者さんにも、遺伝子などの変化に基づく適切な治療を届けたいと考え、対象を拡大して進化させたのが今のMONSTAR-SCREENです。
第3期SCRUM-Japanでは「MONSTAR-SCREEN」として、2年間でさらに2つの新薬、そして、血液を用いてがんの遺伝子の変化を調べるリキッドバイオプシー検査キットなどの保険適用に貢献しました。第4期SCRUM-Japanでは「MONSTAR-SCREEN-2」として、3年間でさらに4つの薬剤の効能追加や、それら薬剤の適切な使用を判断するためのコンパニオン診断薬キットの保険適用に貢献しました。さらに、これまでMONSTAR-SCREENとして取り組んできたがん個別化医療やリキッドバイオプシーの成果を世界に向けて大きく発信いたしました。現在、本プロジェクトには、研究体制が整っており治験などの実施が可能な全国55病院が参加しています。
MONSTAR-SCREEN-3の新たな挑戦

GI-SCREEN-JapanとMONSTAR-SCREENでは、がんの遺伝子の傷であるDNAの変化を調べる、いわゆる「ゲノム解析」を基にがん治療薬などの開発をしてきました。
しかし、がんの発生や増殖の原因となる異常はDNAだけではなく、RNAやタンパク質などいろいろなレベルで生じており、「MONSTAR-SCREEN-2」では、DNA、RNA、タンパク質といったさまざまな分子レベルでの変化を網羅的に調べる「マルチオミクス解析」を導入しました。 そして、これらマルチオミクス解析の導入により、がんの病態はがん細胞だけではなく、がんの周囲の環境(腫瘍微小環境)における免疫細胞などの非がん細胞との関係・作用が重要であることがわかってきました。
「MONSTAR-SCREEN-3」では、以下のような新たな試みを行い、より適切ながん治療薬を全ての患者さんへいち早く届けることを目指します。
導入する検査は、がん細胞の全てのDNAを解析(全ゲノム解析:WGS)することで、高精度にMRDの検出を可能とする「WGS-based MRD」という最新の技術です。
3200人の固形がん・血液がんの患者さんに革新的なマルチオミクス解析を実施し、世界をリードするデータ基盤の拡大と患者さんとともに挑む未来のがん個別化医療へ
MONSTAR-SCREEN-3のマルチオミクス解析では、患者さんのがんの組織と血液を用いて、DNA、RNA、タンパク質の変化を網羅的に調べ、その結果を基に適切な治療や治験の選択肢を提示します。また、患者さんの便や唾液の解析、生活の質の評価、定期的な臨床情報に加えて画像情報の収集も行い、患者さんの病態を多角的に評価して新たな治療開発を目指します。
再発・転移固形がん(肺がん以外)の患者さん1700人、手術などの根治的治療を行う固形がんの患者さん1100人、血液がんの患者さん400人、合わせて3200人の患者さんにマルチオミクス解析を受けていただく予定です。
なお、このマルチオミクス解析の検査費用に関して、患者さんの自己負担はありません。遺伝性腫瘍に関連する遺伝子が見つかった場合に必要になる詳細な遺伝子検査もプロジェクト内で行います。

現在保険診療で使えるがん遺伝子パネル検査によるDNA解析では、その結果を基にした標的治療が受けられる患者さんは10%程度と報告されています。我々がこれまで実施してきたMONSTARプロジェクトを統合解析した結果では、マルチオミクス解析を導入し、スムーズに標的治療や治験の選択肢を提示することで、約20%の患者さんが検査結果を基にした標的治療を受けることができ、より長く生存することができました。
マルチオミクス解析から得られるデータは膨大であることから、多量かつ多種類の情報を素早く処理するために人工知能(AI) を用いた解析も導入しています。高性能コンピュータを用いた分析システム「VAPOR CONE」の内部に、これまで実施してきたMONSTARプロジェクトのデータおよびMONSTAR-SCREEN-3の大規模データを格納して解析します。
MONSTAR-SCREENが見据える究極の目標
患者さんとご家族にMore than Happyを届ける

我々の最終ゴールは、
がんが再発・転移しても治る病気にすることです。
MONSTAR-SCREEN-3になっても、SCRUM-Japan開始当初からの「日本の患者さんに有望な薬を世界に先駆けていち早く届けたい」という思いに変わりはありません。一人でも多くの患者さんとご家族に幸せを届け、笑顔になっていただくためにも、新しい発想や技術をいち早く取り入れて世界のがん治療をリードし、ダイナミックにフレキシブル、かつ貪欲にトライを繰り返し目標に向かって前進したいと考えています。