プロジェクトの成果とは

SCRUM-Japanの成果

産学連携全国がんゲノムスクリーニングプロジェクトSCRUM-Japan(スクラム・ジャパン)は、新しく開発された有効な薬剤をいち早く届けるために2015年に開始したプロジェクトであり、参加する患者さん、参加医療機関数、連携する製薬企業数などいずれも世界的にみて大規模なプロジェクトです。
がん患者さんへ有効な治療薬をいち早く届けることを目的とした活動の結果、多くの成果をあげてきましたので、その中から主な成果についてご紹介します。

希少頻度の遺伝子変化が原因と考えられる患者さんを特定し、適切な薬剤選択をサポート ─ 遺伝子変化に適合した新しい薬剤の臨床試験への登録推進

SCRUM-Japanは開始以来、約3万例の組織遺伝子検査と約1万例のリキッドバイオプシーの解析結果を集積してきました。その中から希少頻度の遺伝子変化を持つ患者さんを特定し、その変化に適合する新薬の医師主導治験、企業治験への登録を推進することによって、個別化医療の確立を目指しています。患者さんは、SCRUM-Japanに参加することにより、費用を負担することなく、革新的なの遺伝子検査を受けることが可能になり、その解析結果に適合する革新的な治療を受ける機会をより多くすることができます。

新しい治療薬と診断薬を、迅速に世の中へ送り出す ─ 薬事承認の取得

SCRUM-Japanの遺伝子解析で特定された様々な遺伝子変化を持つ患者さんが、適合する多くの臨床試験に参加して、新しい薬剤の投与を受けた結果、新薬20剤27適応、遺伝子診断薬16種の薬事承認の取得に成功し、全国の患者さんに一般臨床において治療薬を届けることができました。

産学連携で大規模な臨床ゲノムデータベースを構築し、全国の施設と共同で治療開発を推進

SCRUM-Japanに登録された臨床・ゲノム情報は安全な環境でデータベース化して、製薬企業に共有し、薬剤耐性メカニズムの研究、新しい治療標的の発見など、がんに対する新薬の創出や研究に利用されています。更に、これらの情報をがんゲノム医療の中核となる医療機関等と共有することで、有効な薬剤が迅速に患者さんに提供され、治療成績の改善に貢献することを目指しています。これまで、企業治験78件、医師主導治験28件をサポートしてきました。

国際的データベースの構築

現在スクリーニングしている遺伝子変化の中には、数パーセントの希少な頻度の遺伝子も多く含まれており、更に各遺伝子変化は複数のサブタイプに分類されていることから、適切な薬剤を突き止めるには、国内のデータだけでは不十分な状況です。このためSCRUM-Japanでは、欧米やアジアの国々と臨床ゲノムデータベースを統合し、個別化医療の発展に大きく貢献できるような国際的なデータベースの構築を推進しています。

リキッドバイオプシーの更なる実用化を目指して

腫瘍の遺伝子解析を行うためには、組織生検が必須であり、患者さんの負担が大きいのも現実です。SCRUM-Japanでは、患者さんの血液を用いて腫瘍の遺伝子解析を行うリキッドバイオプシー研究を2018年から開始しています。リキッドバイオプシーは、従来の腫瘍組織の遺伝子解析と比較して、患者さんの負担が軽減し、結果が分かるまでの時間が短縮され、多くの患者さんが新しい治療薬の臨床試験に参加することが可能になっています。また、血液中に残存する微小な遺伝子(微小残存病変:MRD, minimal residual disease)を高感度の解析方法で同定することが可能になり、治療後の病状を正確に把握しながら治療方針を検討することが可能になっています。

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